APP SEEDのコンセプトを表したイラスト

AIにアプリを作らせる前に、APP SEEDを作りました

「AIを使えば、誰でもアプリを作れるようになる」

最近、そんな話をよく聞くようになりました。

実際、CodexのようなAIエージェントにお願いすると、画面を作り、データベースを用意し、必要な機能まで実装してくれます。

以前なら専門的な知識が必要だったことを、普通の言葉で頼めるようになってきました。

ただ、私はこの言葉を半分だけ信じています。

確かに、AIはアプリを作れるようになりました。

しかし、何もない場所から、業務で安全に使い続けられるものを作るのは、やはり簡単ではありません。

どのようにデータを持つのか。

パスワードや重要な情報をどう守るのか。

機能を追加しても壊れにくい構造になっているか。

数か月後、別の人が修正できる状態になっているか。

AIがコードを書いてくれるようになったからこそ、最初にどのような土台を渡すかが、以前より重要になるのではないか。

そう考えて、私はひとつの仕組みを作りました。

名前は、Action Harnessです。

頭の中で管理し続けていたもの

業務シグナルを次のアクションにつなぐ仕組みの概要

きっかけは、とても個人的な困りごとでした。

私は仕事柄、自分で管理しているサーバーやドメインの契約が100件以上あります。

いつ更新するのか。

いつ支払いが発生するのか。

その契約は今後も必要なのか。

解約するなら、いつまでに判断しなければならないのか。

ひとつひとつは、決して難しい仕事ではありません。

ところが件数が増えると、常に頭のどこかで覚えておかなければならなくなります。

カレンダーに登録しただけでは、その契約の背景までは分かりません。

一覧表を作っても、毎日自分で開かなければ、確認するべき日が来たことには気づけません。

この「忘れないように頭の中に置き続ける」という状態が、思っていた以上に、自分の時間と頭のメモリを使っていました。

そして、これは私だけの問題ではありませんでした。

お客様の仕事を見ていても、

顧客への連絡時期、商品の納期、契約の更新、在庫の確認、申請の期限、定期的な点検など、同じようなことがたくさんあります。

情報がないのではありません。

Excelやメール、紙の資料、担当者の記憶の中には存在しています。

しかし、

今日、何を確認するべきなのか。
次に、誰が何をするべきなのか。

その形にはなっていません。

そこでAction Harnessでは、業務の中にある日付や状態から「そろそろ確認した方がよいこと」を見つけ、それを次の作業につなげる仕組みを作りました。

私は、この確認情報を「業務シグナル」と呼んでいます。

Action Harnessの考え方は、

業務シグナルを、次のアクションにつなぐ。

というものです。

完成したアプリではなく、育てるための種

業務シグナルを次のアクションにつなぐ仕組みの概要

ただ、Action Harnessを作りながら、私は別の可能性にも気づきました。

これは、私の業務を管理するためだけのシステムではありません。

企業ごとの仕事に合わせて、Codexと一緒に機能を増やしていくための土台にもなります。

そこで私は、このような土台をAPP SEEDと呼ぶことにしました。

APP SEEDは、完成した業務パッケージではありません。

反対に、何もない状態から始める開発でもありません。

データベース、ログイン、基本的な画面構成、情報の登録や検索、権限やセキュリティなど、業務アプリとして必要になる基礎をあらかじめ整えておきます。

その上で、

「契約の更新日が近づいたら、担当者に表示したい」

「顧客ごとに、次に連絡する日を管理したい」

「案件を一覧だけでなく、カンバン形式でも見たい」

「今月解約を検討する契約だけを表示したい」

といった要望を、CodexなどのAIエージェントに伝えていきます。

AIは、すでにある土台やデータ構造を理解しながら、必要な画面や機能を追加していきます。

もちろん、人間による確認は必要です。

重要なデータを扱う部分や、業務上の判断を伴う部分まで、すべてAI任せにしてよいとは思っていません。

それでも、毎回ゼロから危険な部分を組み立てるのではなく、一定の設計方針を持ったAPP SEEDから始めることで、AIと一緒に開発できる人の範囲は、かなり広がるのではないかと思っています。

営業や専門家が、アプリの起点になる

APP SEEDを土台にアプリを育てていく考え方

これまでのシステム開発では、お客様の要望を聞き、エンジニアに伝え、設計し、開発し、確認してもらうという流れが一般的でした。

そのため、良い提案ができる人と、実際に作れる人の間には、どうしても距離がありました。

APP SEEDがあると、この仕事の進め方を少し変えられるかもしれません。

営業が、お客様の業務を聞く。

その業界に詳しい人が、どの情報を残すべきか考える。

現場の人が、いつ何を確認できれば助かるのかを伝える。

そして、その内容をもとにAIエージェントが画面や機能を形にしていく。

技術者だけが、最初から最後まで考える必要はありません。

むしろ大切になるのは、

その会社では何を忘れてはいけないのか。

どの状態になったら危険なのか。

どのタイミングで、誰が動くべきなのか。

という業務の知識です。

これは、長くその仕事をしてきた人にしか分からないことです。

専門家の経験から「〇〇 Harness」を作る

営業や専門家の業務知識を起点にアプリを作る流れ

Action Harnessは、幅広い業務を扱えるように作っています。

しかし、特定の仕事に詳しい人と一緒に作れば、さらに専門的な仕組みに育てることもできます。

営業経験のある人と作る、営業Harness。

学校業務に詳しい人と作る、学校Harness。

観光の現場を知っている人と作る、観光Harness。

設備管理の経験者と作る、点検Harness。

採用や人材育成の知識を持つ人と作る、採用Harness。

名前はまだ仮のものですが、考え方は同じです。

専門家が持っている経験や判断基準を整理し、AIが理解できるデータとルールに変えていく。

その土台として、APP SEEDを使います。

AI時代になると、これまでの経験の価値がなくなるのではないか。

そう感じている人もいるかもしれません。

私は、むしろ反対ではないかと思っています。

AIは、画面やコードを作ることはできます。

しかし、何を管理するべきなのか、どの状態を見逃してはいけないのかまでは、勝手には決められません。

そこには、実際に仕事をしてきた人の知識が必要です。

これから価値が高まるのは、単に知識を持っている人ではなく、その知識をAIが使える形に変えられる人なのかもしれません。

人間が使う画面から、AIも理解できる仕組みへ

APP SEEDから新しい業務アプリが育っていくイメージ

これまでの業務システムは、基本的に人間が画面を見て操作することを前提に設計されてきました。

もちろん、これからも人が使いやすい画面は必要です。

ただ、AIエージェントが仕事に参加するようになると、画面だけでは足りません。

顧客、契約、商品、案件、期限、担当者、現在の状態、次に必要な作業。

それぞれの情報が、整理されたデータとしてつながっている必要があります。

AIは、そのデータを読み、状況を把握し、次に取るべき行動を考えます。

つまり、これからは、

人間が操作しやすいシステムを作り、後からAIを追加する

のではなく、

最初から、人間にもAIにも理解できる業務構造を作る

という考え方が必要になるのではないでしょうか。

Action Harnessに蓄積されるデータベースは、単なる記録ではありません。

その会社の業務が、今どのような状態にあるのかをAIに伝えるためのコンテキストになります。

そこまで整って、初めてAIエージェントは、その会社の仕事に参加できるようになります。

私が作りたいのは、AIが派手な回答を返す仕組みではありません。

AIエージェントが、実際の業務の中で働ける会社です。

まずは、土台を作りました

人間にもAIにも理解できる業務構造のイメージ

Action Harnessも、APP SEEDという考え方も、まだ始まったばかりです。

ただ、これまで別々だったものが、少しずつつながってきました。

業務を知っている人。

お客様の困りごとを聞き出せる人。

システムを設計できる人。

そして、コードを書き、機能を増やしていくAIエージェント。

これらが組み合わされば、これまでとは違う形のクライアントワークができるのではないかと思っています。

営業が得意な方。

何かの業務に長く携わってきた方。

AIを使って、お客様に役立つ仕事を始めてみたい方。

自分の経験がAI時代には役に立たなくなるのではないかと、少し不安を感じている方。

その経験の中には、まだシステムになっていない大切な判断が、たくさん残っているはずです。

私は、それをAIに渡せる形にするための土台を作りました。

あなたの頭の中で、今も「忘れてはいけない」と管理し続けているものは何でしょうか。

そこに、次のAPP SEEDの種があるのかもしれません。

具体的に、どんなことができるのか

APP SEEDは、決まったひとつの業務だけを行う完成品ではありません。

会社ごとの仕事に合わせて、必要な情報、判断のタイミング、画面、一覧の見せ方を組み合わせながら育てていきます。

たとえば、次のような仕組みを作ることができます。

契約や更新期限を管理する

サーバー、ドメイン、保守契約、ライセンスなどを登録し、更新日や解約判断の期限が近づいたものを自動で確認対象にします。

顧客への次の連絡を見える化する

最終連絡日、次回連絡予定、過去の対応内容を顧客情報と結びつけ、今日連絡するべき相手を一覧にできます。

案件の進行状況を整理する

案件ごとの担当者、期限、現在地、次の作業を管理し、一覧、カンバン、カレンダーなど業務に合った形で表示できます。

納期や確認漏れを防ぐ

商品の納期、原稿確認、承認待ち、発送予定など、止まっている工程や期限が近い仕事を業務シグナルとして表示します。

定期業務を忘れない仕組みにする

毎月、半年ごと、年に一度などの定期点検や報告業務を登録し、その都度人が思い出さなくても次の作業につなげられます。

専門家の判断基準を仕組みにする

経験者が普段どこを見て、何を危険と判断しているのかを整理し、確認条件や次のアクションとしてシステムに組み込めます。

必要な帳票や一覧を作る

既存の業務に合わせて、検索条件、絞り込み、CSV出力、印刷用画面など、現場で必要な見方を追加できます。

AIに業務状況を読ませる

整理されたデータベースをAIに渡し、「今日確認すべきこと」「対応が遅れている案件」「次に連絡する顧客」などを判断させられます。

重要なのは、これらの機能を最初から全部入れることではありません。

今の業務で最も負担になっている部分から始め、実際に使いながら少しずつ増やしていきます。

完成品を導入するのではなく、その会社の仕事に合う形へ育てていけることが、APP SEEDの特徴です。